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連続意見書第四 棚卸資産の評価について

連続意見書第四 棚卸資産の評価について

連続意見書第四

棚卸資産の評価について
(昭和37.8)

第一 企業会計原則と棚卸資産評価
一 企業会計原則における棚卸資産評価原則
 企業会計原則は、原価主義を資産評価の一般原則とし、棚卸資産についても原則として取得原価に基づく評価を要求している。取得原価としては実際購入原価又は実際製造原価をとることを建前とするが(企業会計原則第三、五、A)、必ずしも文字どおりの実際原価には拘泥せず、原価計算の基準および一定の原価計算方法に基づき、標準価格又は予定価格を適用して算定した製造原価をも取得原価とする旨を企業会計原則注解(以下注解という。)十八において明らかにしている。
 原価主義を具体的に適用するための評価基準、すなわち、取得原価基準に関して、企業会計原則は、「先入先出法、後入先出法、平均原価法等によって取得原価を算定することが困難な場合には、基準棚卸法、小売棚卸法等による一定の棚卸評価基準を採用することができる。」と述べている。
 「先入先出法、後入先出法、平均原価法等」の「等」には、個別法などが含まれ、「基準棚卸法、小売棚卸法等」の「等」には、修正売価法、金額後入先出法、拘束在高法などが含まれるものと解釈される。基準棚卸法、小売棚卸法(取得原価基準に属する小売棚卸法)等は、特殊な業種によって用いられる取得原価基準の評価方法、又は価格の変動を考慮に入れた修正取得原価基準の評価方法である。
 注解十八が原価計算の基準および一定の原価計算方法に基づき、標準価格又は予定価格を適用して算定した製造原価をも取得原価とするというのは、生産品の取得原価を適正な標準原価又は予定原価(原価要素の価格のみならず、消費量をも標準又は予定で計算した原価)で貸借対照表に表示することを認める趣旨である。
 企業会計原則は、また「棚卸資産については、その時価が取得原価よりも下落した場合には時価によって評価することができる。」と述べ、(企業会計原則第三、五、A、第二項)、原価主義に対する例外としての低価主義を容認している。
二 取得原価基準
1 費用配分の原則 費用配分の方法
  貸借対照表における棚卸資産の評価基準には、取得原価基準、低価基準および時価基準が存在するが、適正な期間損益算定の見地からすれば、決算貸借対照表における評価基準としては、取得原価基準を採用しなければならない。
  取得原価基準は、棚卸資産の取得に際して会計帳簿に記録された実際購入原価又は実際製造原価を基礎とし、これに各種の原価配分方法を適用することによって、期間中の払出棚卸資産原価を算定するとともに期末棚卸資産原価を算定し、後者をもって期末棚卸資産の評価額とする評価基準である。
  適正な期間損益の算定にとっては、一般に、購入又は生産した棚卸資産の取得原価を一期間の実現収益に合理的に対応させることが必要である。実現収益に対応する棚卸資産原価を確定するためには、棚卸資産の取得(購入又は生産)に要した現金支出額又はその等価額(すなわち取得原価)を分類、集計し、これを払い出された棚卸資産と未払出しの棚卸資産とに配分する手続をとり、販売のために払い出された棚卸資産への配分額を把握しなければならない。この原価額をもって実現収益に対応する費用とし、未販売の棚卸資産に配分された支出額はこれを将来の期間の費用として繰り越すのである。このような資産原価の期間配分手続をささえる根本思考を費用配分の原則と称する。費用配分の原則にしたがい、棚卸資産の取得に要した支出額が当期の費用たる部分と将来の期間の費用となる部分とに配分され、後者が決算貸借対照表に棚卸資産として記載されるのである。
  棚卸資産は、このように、支出の結果を表現したものにほかならない。棚卸資産の貸借対照表価額は、貸借対照表日における即時換金額をあらわさなければならないとし、または、貸借対照表日現在の棚卸資産を通常の営業過程において販売する場合の正味実現可能価額をあらわさなければならないとし、あるいは、貸借対照表日における再買原価又は再造原価をあらわさなければならないとする考え方すなわち時価主義は、財産貸借対照表の概念から導き出された評価思考であって、適正な期間損益算定を目的とする決算貸借対照表には適用され得ない。時価主義による評価を行なうならば、一期間の損益が他の期間に帰属すべき損益によってゆがめられる結果がもたらされるのである。
  棚卸資産の取得原価を期間配分するための具体的方法としては、先入先出法、各種の平均法、後入先出法、個別法等がある。これらの方法によって、棚卸資産の取得原価は払出棚卸資産原価(材料費、売上原価など)と未払出棚卸資産原価(一時点における手持材料原価、手持仕掛品原価、手持製品原価)とに配分されるのである。
  各企業は期間損益の適正な算定を指導原理とし、企業の性質、棚卸資産の性質・種類、物的移動の実情、採用する原価計算の方法等を考慮にいれて期間配分の方法を選択しなければならない。注解十八は「必要に応じ、棚卸資産の種類によって異なる棚卸方法(本意見書における棚卸資産原価の配分方法を意味する。)を選択適用することができる。たとえば原材料に先入先出法を適用し、半製品に平均原価法を適用するというような場合はその例である。」と述べているが、原材料をその性質によって細分し、たとえば価格変動の著しいものには後入先出法、価格の安定的なものには先入先出法、重要性のないものには総平均法を適用するというような選択方針も許される。合理的判断に基づいて一たん選択した方法は、著しい事情の変化がない限りこれを継続的に適用すべきである。
  棚卸資産はそれが利用又は処理されるまで取得原価をもって記録され、利用又は処分されたときにその原価を費用に配分することを原則とするが、損傷、品質低下等の原因により物質的欠陥を生じた棚卸資産又は陳腐化等の原因により経済的欠陥を生じた棚卸資産については、これらの資産を欠陥の生じた状態において新たに取得すると仮定した場合の取得原価をもって評価することが必要である。ただし、実際問題として新規の取得原価を推定することには著しい困難を伴なうことが多い。したがってその原始取得原価を、売価からアフター・コストを差し引いた価額(正味実現可能価額)又は売価からアフター・コストおよび正常利益を差し引いた価額まで切り下げることによって修正し、これをこの種の資産の新規取得原価とみなす方法が通常採用される。これに伴ない、原始取得原価の切捨額は利用又は処分に先だって費用に配分される。
2 予定原価の適用
  原価要素の価格の一部又は全部を予定で計算した生産品原価は、当該価格が適正に予定されており、その適用期間を通算して原価差額発生額が合理的に僅少である場合には、これを生産品の貸借対照表価額とすることが認められている。
  予定原価又は標準原価(原価要素の価格のみならず、消費量をも予定又は標準で計算した原価)を適用することによって把握された生産品原価も、当該原価が適正に決定されており、その適用期間を通算して原価差額発生額が合理的に僅少である場合には、これを生産品の貸借対照表価額とすることが認められている。注解十八にいう「原価計算の基準及び一定の原価計算方法に基き」算定された原価とは、予定又は標準が適正に決定され、原価差額が合理的に僅少であるという要件を満たす原価を意味する。
  かかる取得原価をもって棚卸資産の貸借対照表価額とする評価方法は、すなわち予定を利用する実際原価法、予定原価法、又は標準原価法は、取得原価基準に属するものとする(注1)。
3 修正売価の適用 注4に戻る
  副産物の評価、農鉱産品等の特殊な棚卸資産の評価には、修正売価法の適用が認められている。
  修正売価法は、この種の棚卸資産の取得時又は期末における売価(あるいは正常売価)に基づいて算定した価額を取得原価とみなす方法である。売価に基づく取得原価は、売価からアフター・コストを差し引いた価額(正味実現可能価額)又は売価からアフター・コストおよび正常利益を差し引いた価額とするのが普通である。
  副産物にあっては、その取得原価の算定が原価計算技術上不可能であるから、修正売価による評価額を取得原価とみなし、その評価方法を取得原価基準に属するものとする。副産物を取得時に評価し、したがって、一期間中に異なる評価額で受入れが記録される場合には、これに先入先出法、平均法、その他の原価配分方法を適用して求めた金額をもってこの種の棚卸資産の貸借対照表価額とする(注2)。
  農産品(米麦等)については、政府買入価格が公表される関係上、その売価が確定していること、費用がジョイント・コストとして発生するために生産品原価の計算が必ずしも容易でない上に、原価計算能力をもたない小規模経営が多いことなどの理由に基づき、期末の手持品(成長途上のものを含む。)の評価に修正売価を適用することが認められている。
  鉱産品中の貴金属についても、安定的な市価による確実な市場が存在するなどの理由に基づき、その期末手持品の評価に修正売価を適用することが少なくない。
  農鉱企業にあっても、なるべく原価計算方式による生産原価の把握に努め、期末資産の原価評価を実行すべきであるが、修正売価の適用が容認される理由は、実際問題として対象資産の期末手持量が僅少であって、きわめて短時日のうちにすべてが販売される実情にあるため、修正売価を適用しても適正な期間損益計算を著しくゆがめない結果がもたらされることにある。
4 売価還元原価法 売価還元低価法
  取得品種のきわめて多い小売業および卸売業における棚卸資産の評価には、売価還元法(小売棚卸法又は売価棚卸法ともいう。)の適用が認められている。売価還元法は、一品目ごとの単位原価をもって棚卸資産を評価することが困難なこの種の企業において、棚卸資産のグループごとにその売価合計額から取得原価の合計額を概算する方法である。
  すなわち売価還元法にあっては、商品の自然的分類(形状、性質、等級等の相違による分類)に基づく品種の差異をある程度無視し、異なる品目を値入率、回転率の類似性にしたがって適正なグループにまとめ、一グループに属する期末商品の売価合計額に原価率を適用して求めた原価額を期末商品の貸借対照表価額とする(当該商品グループの期首繰越原価と当期受入原価総額の合計からこの期末商品原価を差し引くことによって当期の費用に配分される商品原価すなわち売上原価を求めるのである。)。原価率の計算は次の算式による。
       期首繰越商品原価+当期受入原価総額
原価率=─────────────────────────────────────────────
    期首繰越商品小売価額+当期受入原価総額+原始値入額+値上額 値上取消額 値下額+値下取消額

  この原価率を適用する売価還元法によれば期末商品の総平均原価に相当する評価額が求められるので、これを売価還元平均原価法となづけ、取得原価基準に属する評価方法とする(注3)。
  期末商品の売価に小売価格指数その他の価格指数を適用することによってこれを後入先出原価で評価する方法を売価還元後入先出法となづけ、取得原価基準の属する評価方法とする。売価還元後入先出法は、金額後入先出法と本質的に同じものであり、これを実行するには価格指数の決定が必要である。以上の二つを総称して売価還元原価法となづける。
  売価還元法の利用は、必ずしも小売業および卸売業の場合に限られない。製品又は部品の品目数の膨大な製造工業(たとえば製薬工業、組立工業)において、製品又は部品の払出を一々単位原価で記録することが煩雑な場合に売価還元法を利用するのがその例である。
5 最終取得原価法
  最終取得原価法(購入品にあっては、最終仕入原価法又は最近仕入原価法、生産品にあっては、最終製造原価法又は最近製造原価法)は、最終取得原価をもって期末棚卸資産原価を算定する方法として利用されるほか、最近取得原価をもって払出原価を算定するとともに期末棚卸資産原価を算定する方法としても利用される。この方法によれば、期末棚卸資産の一部だけが実際取得原価で評価され、他の部分は時価に近い価額で評価される可能性が多い。したがって無条件にこの評価方法を純然たる取得原価基準に属する方法と解することは妥当でない。期末在庫量の大部分が正常的に最終取得原価で取得されている場合にのみこの方法を取得原価基準に属する評価方法とみなすことができるのである。かかる事情が正常的に存在する企業において最終取得原価法を採用する場合にも、期末棚卸資産の先入先出原価と最終取得原価との差異を確かめ、差異が僅少な場合を除き、相当の評価引当金を設定しなければならない(注4)。
6 基準棚卸法
  著しく価格変動の危険にさらされる棚卸資産を多く手持する業種にあっては、基準棚卸法(恒常在高法、正常在高法、最低在高法、基準在高法、固定在高法などともいう。)を適用することが是認される。この方法は後入先出法と同様に、価格変動によって生ずる棚卸資産損益を損益に顕現させないことを眼目とする評価方法である。この方法によれば、基準量を食い込む払出しが行なわれた場合には、払出原価は再調達原価等で算定されるので、後入先出法に比し、よりよくその目的を達成することができる。ただし、期末に食込みが生じていると、基準棚卸法は取得原価基準の評価方法から逸脱することになるので、払出しが仕入れ・生産によって順調に補充されるような在庫政策を実施し、この方法が取得原価基準から乖離することを防止するように努めなければならない。なお、基準量およびその評価額を決定するに当たっては、慎重な研究と判断を行ない、恣意性が介入しないように留意する必要がある(注5)。
三 低価基準
1 原価時価比較低価法 税法との関連
  棚卸資産評価の一般原則たる原価主義に対する例外的な評価原則として低価主義が存在し、広く採用されている。低価主義を具体的に適用するための評価基準を低価基準となづける。
  低価基準は、価格変動に基づいて、期末棚卸資産の取得原価が時価をこえる事実が発生している場合には、時価をもって期末棚卸資産の評価額とし、取得原価が時価をこえていない場合には、取得原価をもって期末棚卸資産の評価額とする評価基準である。
  低価主義は、期間損益計算の見地からすると合理性をもたないが、しかしそれは広く各国において古くから行なわれてきた慣行的評価思考であり、現在でも実務界から広く支持されている。棚卸資産に低価基準を適用することによって、それが通常の営業過程においていくばくの資金に転化するかを示すことも、ある意味では有用である。各国の税法も低価基準の適用に伴う評価損を例外なく課税所得の計算上損金に算入する建前をとっている。このような事情のもとにおいて低価基準を全く否定し去ることはできない。したがって原価基準の例外として低価基準を採用することも容認される。
  低価基準を適用する場合における時価としては、決算時の売価からアフター・コストを差し引いた価額、すなわち正味実現可能価額が適当であるが、再調達原価をとることも認められる。再調達原価の代替として、最終取得原価(決算日に最も近い実際取得原価)又は売価からアフター・コストおよび正常利益を差し引いた価額をとることもある。決算時の正味実現可能価額を時価とする場合には、期末棚卸資産が次期に販売されるときにさらに売価が下がるかもしれないし、逆に上がるかもしれないので、評価切下げが過大又は過少となる欠陥があらわれる。一方、再調達原価を時価とする場合には、期末棚卸資産が次期に販売されたときに正常的には販売利益をもたらす点にまで当該棚卸資産の取得原価を切り下げてしまう欠点(販売時の売価が再調達原価を下回るときには販売損失を若干残す点までしか取得原価を切り下げ得ない欠点)があらわれる反面において、将来の売価が再調達原価に歩調を合わせて動く場合には、実質的に将来の予想売価を基礎とするのと同様な評価切下げを可能にさせる長所があらわれるのである。さらに購入品の時価としては再調達原価の方が把握しやすく、生産品の時価としては売価に基づく正味実現可能価額の方が把握しやすいという両者の長短も認められる。
  時価を把握すれば次の方法によって評価切下額が決定されるのである(注6)。
(1) 取得原価と正味実現可能価額を比較する方法
(2) 取得原価と再調達原価を比較する方法
(3) 取得原価、正味実現可能価額、再調達原価の三つを比較し、最低の価額をとる方法
  時価の選択および比較方法の選択に関する意思決定は、棚卸資産の種類・性質、手持量の大小、価格変動の特異性に応じて適正になされなければならない。
  低価基準の適用方法として、評価切下げ後の簿価を繰越棚卸資産の次期における取得原価とみなす方法があり、評価切下げ前の取得原価を繰越棚卸資産の次期における取得原価とする方法がある。前者は、一たん評価切下げを行なったならば評価額を再びもとの原始取得原価に戻さない方法であり、後者は、簿価いかんにかかわらず、常に原始取得原価と時価とを比較する方法である。
  後者の方法によれば、時価の反騰に応じて、前期以前に期間費用に配分された棚卸資産原価の一部又は全部を当期の収益に繰り戻す結果を生ずるが、低価基準をささえる保守主義の思考からすれば、時価の反騰を度外視する方法による低価法の方が妥当と考えられる(注7)。
  低価法適用上、棚卸資産の一品目ごとに原価時価比較を行なう方法をとるか、棚卸資産の各品目を適当なグループにまとめ、グループごとに原価時価比較を行なう方法をとるか、棚卸資産の全品目を一括して原価時価比較を行なう方法をとるかに関しては、企業の事情、棚卸資産の性質等に基づき、いずれの方法をとれば、期間損益を最も適正に表現することになるかという観点から、方法の選択を行なうべきである。たとえば、ある製品種類に使われる材料と当該製品種類の仕掛品および製品在庫はこれを一グループとして低価の事実の有無を見ることが妥当である。全品目を一括して原価時価比較を行なう方法は多くの場合妥当でない。
  低価基準を採用する限り、棚卸資産の全品目にわたって低価評価を実施することを建前とするが、重要な品目を選択し、これについてのみ低価評価を行ない、また時価低落の著しい品目に限って評価切下げを行なうことも、実務の便宜として許される(注8)。
  企業が一たん低価基準を採用した以上は、価格の低落によって棚卸資産原価の切下げを必要とする事態が発生している限り、低価評価を実行すべきである。評価切下げを必要とする事実を認識しながら、利益操作の目的で期によって評価切下げを適当な額にとどめたり、全く評価切下げを行なわなかったりすることは不当である。
2 売価還元低価法 税法との関連 注3に戻る 注14に戻る
  本意見書の第一、二、4に示した原価率の算式における分母から値下額および値下取消額を除外することによって計算した原価率を用いる売価還元法は、低価基準に属する評価方法として、これを売価還元低価法となづける。売価還元法を採用する企業が低価評価の目的を達するにはこの方法によることが是認されている。原価時価比較低価法は実行されていない。
四 貨幣価値変動時における評価の特例
 貨幣価値が著しい低落を示す次期には、通常の取得原価基準に属する評価方法に代えて、(イ)基準棚卸法、(ロ)期末棚卸量に生じた不可避の食込みがその後補充されたときにその補充分につき原始原価を復活する後入先出法、(ハ)これに類似する拘束在高法等を採用し、貨幣価値変動から生ずる架空利益の排除に努めることが必要である。これらの方法の特徴は、期末棚卸量の評価額が逐次高い原価におきかえられることを防止することによって架空利益を排除することにある(注9)。
 貨幣価値変動時に適用される評価方法としてはさらに再調達原価法がある。この方法は、払出量ならびに期末棚卸量を再調達原価で評価し、取得原価との差額を資本修正勘定とするものである。貨幣価値の変動は棚卸資産の需給関係から生ずる価格変動と結合してあらわれるのであるから、純粋に貨幣価値の変動による架空損益を資本修正勘定として分離するには取得原価基準の原価額と一般物価指数による修正価額との差額を把握する方法を適用すべきである。
五 取得原価の決定
1 購入品の取得原価
  購入棚卸資産の取得原価は、購入代価に副費(附随費用)の一部又は全部を加算することにより算定される。
  購入代価は、送状価額から値引額、割戻額等を控除した金額とする。割戻額が確実に予定され得ない場合には、これを控除しない送状価額を購入代価とすることができる。
  現金割引額は、理論的にはこれを送状価額から控除すべきであるが、わが国では現金割引制度が広く行なわれていない関係もあり、現金割引額は控除しないでさしつかえないものとする。
  副費として加算する項目は、引取運賃、購入手数料、関税等容易に加算しうる外部副費(引取費用)に限る場合があり、外部副費の全体とする場合がある。さらに購入事務費、保管費その他の内部副費をも取得原価に含める場合がある。加算する副費の範囲を一律に定めることは困難であり、各企業の実情に応じ、収益費用対応の原則、重要性の原則、継続性の原則等を考慮して、これを適正に決定することが必要である。
  副費を加算しないで、購入代価とは別途に処理し、期末手持品に負担させる金額を繰り越す場合には、これを貸借対照表には棚卸資産に含めて記載することが妥当である。
  購入に要した負債利子あるいは棚卸資産を取得してから処分するまでの間に生ずる資金利子を取得原価に含めるかどうかは問題であるが、利子は期間費用とすることが一般の慣行であるから、これを含めないことを建前とすべきである(注10)。
2 生産品の取得原価
(1) 完成品の取得原価
   生産品については適正な原価計算の手続により算定された正常実際製造原価をもって取得原価とする。販売費および一般管理費は取得原価に含めないのが通例であるが、一部の販売直接費はこれを取得原価に含めることを至当とする場合もある。長期請負工事を営む業種にあっては、半成工事への賦課又は配賦を通じて、販売費および一般管理費を完成工事の取得原価に算入することも認められる。製品の完成後から販売までの間に多額の移管費を要する場合には、これを取得原価に含めることもさしつかえない。
   直接原価計算制度を採用する企業にあっては製品の取得原価に固定製造費を含めないが、貸借対照表に記載する原価は固定費込みの原価とすべきである。
   標準原価又は予定原価をもって製品の取得原価とする場合において原価差額が生じた時には、差額が合理的に僅少な場合を除き、貸借対照表に記載する原価は、差額調整を行なったのちの原価とする。
   連産品については、等価係数によってジョイント・コストを各製品に分割し、当該原価額をもってそれぞれの取得原価とする。
(2) 副産物等の取得原価
   副産物については、適正な評価額をもってその取得原価とする。場合によっては、主副製品分離後における副産物加工費のみをもって取得原価とし、また一定の名目的評価額をもって取得原価とすることも認められる。
   くずの取得原価は副産物に準ずる。
(3) 仕掛品の取得原価
   期末仕掛品は、未完成の製造指図書、原価計算上の工程途中品および工程完了品(ただし、完成品であるものおよび半製品として受払するものを除く。)からなる棚卸資産である。
   未完成指図書によって代表される仕掛品については、個別原価計算の手続により当該指図書に集計された製造原価をもって取得原価とする。
   総合原価計算の手続を適用する仕掛品については、完成品換算量に基づき、先入先出法、平均法等を適用することにより算定された製造原価をもって取得原価とする。
六 棚卸資産原価の配分方法(費用配分の方法)
 棚卸資産の取得原価は、本意見書の第一、二、1「費用配分の原則」に述べたとおり、払出原価(売上原価など)と繰越資産原価とに配分されるが、その配分は、原価の移転に関する仮定、たとえば、先入先出、平均、後入先出等の仮定にしたがって行なわれる。仮定の有無又は相違にしたがって、先入先出法、移動平均法、総平均法、後入先出法、個別法等の配分方法を区別することができる。それぞれの方法に応じて、算出される払出原価および期末棚卸資産原価は相違し、これを次のような呼称で区別する(注11)。
 原価の配分方法  払出原価又は期末棚卸資産原価の区別
  先入先出法    先入先出原価
  移動平均法    移動平均原価
  総平均法     総平均原価
  後入先出法    後入先出原価
  個別法      個別原価
  売価還元原価法  売価還元原価
 これらの原価配分法(企業会計原則は、これを棚卸方法となづけている。財務諸表準則、第一章、第五)は、移動平均法および売価還元原価法を除き、恒久棚卸法(継続記録法)および定期棚卸法(棚卸計算法)のいずれにも結びつく。恒久棚卸法には物量および原価によるものと物量のみによるものとがある。物量および原価による恒久棚卸法にあっては、払出量および払出原価ならびに残存量およびその原価が常時明らかにされる。物量のみの恒久棚卸法にあっては、払出量と残存量とは帳簿記録により常時明らかにされるが、原価の配分は定期的に行なわれる。定期棚卸法にあっては、実地棚卸によって期末棚卸資産の物量を確定し、これに受入記録から求めた先入先出原価、平均原価等を付して期末棚卸資産原価を算定し、これを記録された受入量およびその原価から差し引くことによって払出量およびその原価を算定する。
 移動平均法は、物量および原価による恒久棚卸法とのみ結びつく。売価還元原価法は特殊であって、売価のみによる恒久棚卸法を利用する。この方法にあっては、売価による払出額と残存額とは帳簿記録により常時明らかにされるが(この記録は商品のコントロールおよび原価率算定に用いられる。)、原価の配分は定期的に行なわれる。すなわち売価による期末棚卸高に原価率を乗じて期末棚卸資産原価を算定し、期首繰越商品原価と当期受入原価総額の合計からこれを差し引くことによって売上原価を算定する。
 実地棚卸は、定期棚卸法を可能にさせるための不可欠の手段であるにとどまらず、恒久棚卸法を採用する場合には、帳簿記録の不完全性を補うための不可欠の手段である。実地棚卸と恒久棚卸は合して棚卸資産の内部統制の重要な手段を形成する。恒久棚卸法によって記録された帳簿残高は、実地棚卸によって把握された実際残高と比較され、相違がある場合には、実際残高と合致するように修正されなければならない。棚卸修正差額は棚卸減耗費とし、原価性の有無にしたがい、原価性のあるものは製造原価、売上原価又は販売費に含め、原価性のないものは営業外費用項目又は利益剰余金修正項目とする。
 実地棚卸の方法には、定期実地棚卸の方法と循環実地棚卸の方法とがある。恒久棚卸の補充として用いられる実地棚卸の場合には、右のいずれの方法をも採用することができるが、定期棚卸法の手段として用いられる実地棚卸の場合には、定期実地棚卸の方法を採用しなければならない。
 予定価格、予定原価又は標準原価を適用して生産品原価を算定する場合には、実際製造費用は売上原価、期末生産品原価、原価差額の三者に配分される。原価差額は、合理的に僅少な場合を除き、これを売上原価と期末生産品原価に配分する。
 最終取得原価法にあっては、最終取得原価によって算定された期末棚卸資産原価を期首繰越原価と当期受入原価総額の合計から差し引くことによって原価配分を行なう。最近取得原価法にあっては、払出時における最近取得原価をもって売上原価を算定するとともに期末における最近取得原価をもって期末棚卸資産原価を算定することによって原価の配分を行なう。僅少な評価損益は、売上原価に加減する。
 基準棚卸法にあっては、基準量をこえる期首棚卸量の取得原価と当期受入量の取得原価の合計を売上原価と基準量をこえる期末棚卸量の原価に配分する。したがって期末棚卸資産原価は基準量評価額と基準量をこえる棚卸量の取得原価の合計から構成される。払出量が基準量に食い込んだ場合には、食込量を再調達原価等で評価した金額を売上原価に配分し、基準量評価額から食込量評価額を差し引いた金額を期末棚卸資産の正味価額とする。
 売価還元原価法にあっては、異なる品目をある程度一括して適当なグループにまとめ、各グループごとに原価の配分を行なう。後入先出法にあっても、その計算目的をよりよく達成するために(食込みの発生を防ぐために)類似品目を一グループとして原価の配分を行なう。とくに金額後入先出法および売価還元後入先出法の場合においてしかりである。先入先出法および平均法にあっても、手数を省略するために、若干の品目を一グループとして原価の配分を行なうことが認められる。
 原価時価比較低価法を適用する場合には、期末棚卸資産原価が時価をこえる部分は期間費用に配分される。いわゆる切り放し方式では、一たん期間費用に配分されたこの原価部分を次期に再び棚卸資産原価に繰り戻すことはないが、いわゆる洗い替え方式ではこの原価部分の一部又は全部を次期に再び棚卸資産原価の繰り戻す結果を生ずる。低価法による評価損はこれを売上原価に含める方式が認められているが、多額な場合には別個の費目とすることが望ましい(売価還元低価法の場合を除く。)。洗い替え方式をとる場合は、評価損を売上原価に含めないことが妥当である。売価還元低価法にあっては、売価による期末棚卸高に低価評価が可能になる原価率を乗じて期末棚卸資産価額を求め、これを期首繰越原価と当期受入原価総額の合計から差し引くことによって、評価切下額に相当する金額を含む売上原価を算定する。
 損傷品、陳腐化品等については、当該棚卸資産の利用、処分に先だち原始取得原価の一部が評価損として分離される。この評価損は原価性の有無にしたがい、原価性のあるものは製造原価、売上原価又は販売費に含め、原価性のないものは営業外費用項目又は利益剰余金修正項目とする。
七 棚卸資産の範囲
 貸借対照表に棚卸資産として記載される資産の実体は、次のいずれかに該当する財貨又は用役である。
(イ) 通常の営業過程において販売するために保有する財貨又は用役
(ロ) 販売を目的として現に製造中の財貨又は用役
(ハ) 販売目的の財貨又は用役を生産するために短期間に消費されるべき財貨
(ニ) 販売活動および一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨
 生産販売のために購入された材料その他の財貨が、一部、長期性資産の製作に供用されることがあっても、本来、生産目的で保有されるのであれば当該財貨のすべてを棚卸資産とする。
 減価償却計算の対象となる供用中の長期性資産および償却計算の対象とならない供用中の長期性資産(たとえば土地)ならびに供用されたときに減価償却資産として区分されることが明確な、供用前の資産(たとえば据付予定の保有機械)は、棚卸資産ではない。長期性資産の一品目が一年以内に全額償却され、費用化する状態になってもそれは棚卸資産とならない。長期性資産が、本来の用途からはずされ、売却する目的で保有されることになった場合、当該資産は流動資産ではあるが、棚卸資産ではない(通常の営業過程で販売される対象ではなく、したがって費用財を構成しないから)。ただし、かかる廃棄資産を原材料として生産の用に供する目的で保有する場合には、当該資産は棚卸資産を構成する。
 工場の事務用消耗品は供用されるとともに間接費として製品に化体するから棚卸資産である。製品の実体の一部を構成する包装用品も棚卸資産である。その他の事務用消耗品、荷造用品は販売の対象たる製品に化体しないが、短期的費用財の性格をもつから棚卸資産である。
 棚卸資産は有形の財貨に限らない。無形の用役も棚卸資産を構成することがある。たとえば加工のみを委託された場合にあらわれる加工費のみからなる仕掛品、材料を支給された場合にあらわれる労務費、間接費のみからなる半成工事は棚卸資産である。
 不動産売買業者が販売の目的で保有する土地、建物等は法律上不動産であるが、通常の販売の対象となる財貨であるから棚卸資産を構成する。立木竹のうち短期間に伐採される部分も、短期間に費用化される費用財であるから棚卸資産を構成する。使用資産に類する物品であっても、その実体が徐々に製品に化体していくもの(アルミナ製造における苛性ソーダ溶液、苛性ソーダ製造における水銀等)、耐用期間がきわめて短いもの(消耗工具、器具、備品等)又は取得原価が微細なもの(単位当たり取得原価が一定金額未満の工具、器具、備品等)は、物的性状又は会計的条件からみて明らかに棚卸資産である(注12)。
 有価証券業者等が通常の営業過程において販売するために保有する有価証券は、販売目的の財貨であるから棚卸資産の本質を有する。ただし、その評価基準については別の意見書「有価証券の評価について」にゆずる。


   「棚卸資産の評価について」注解

(注1) 公表貸借対照表に記載する生産品原価として、予定原価又は標準原価を容認するかどうか、原価要素の価格(材料価格、賃率および製造間接費配賦率)の一部又は全部を予定で計算した生産品原価を容認するかどうかには問題があるが、本意見書としては、会計専門家の一般的見解にしたがい、予定又は標準が適正に決定されており、原価差額が合理的に僅少である場合には、これらの原価を棚卸資産の貸借対照表価額となしうることとした。原価差額が合理的に僅少である場合という表現は、実際価格又は実際発生費用の側に異常性、不能率が存在するために多額の原価差額が生じても、それは多額の原価差額に該当しないという意味をもつのである。予定又は標準が不適正な場合においては、原則として原価差額の調整を行なうべきである。したがって原価差額についてはその性質(発生原因)を明らかにし、期間費用とすべきものと製品原価とすべきものとを区別することが必要である。後者の差額はそれが期間損益に対して微細な影響しかおよぼさない場合を除き、これを調整して売上原価および期末生産品原価に配分する。戻る
(注2) 副産物の評価には、修正売価法のほか、取得時の評価をゼロとしてその売上高を主製品の売上原価から差し引く方法、代替品の取得原価の見積額をもって取得原価とする方法(概して副産物を自家用に供する場合に適用する。)、主副製品分類後の加工費をもって取得原価とする方法、一定の名目価額又は固定価額をもって取得原価とする方法等、多種多様な評価方法が適用されている。修正売価法は、副産物の唯一の評価方法ではない。これらの評価方法の選択は、副産物の性質、市場性、当該企業における副産物の重要性等に基づいて行なわれるべきである。市場性のある副産物については取得時の評価をゼロとする方法をとる場合でも、期末には修正売価による評価を行なうべきである。戻る
(注3) 原価率の算式における分母から値下額および値下取消額を除外して原価率を計算し、これを期末商品の小売価額に適用すれば低価基準の評価額が求められる。したがってこの原価率による売価還元法を売価還元低価法とよぶことができる(売価還元低価法については本文第一、三、2参照)。
  売価還元法の全体は、取得原価基準に属する評価方法と低価基準に属する評価方法の両者を含むものと解さなければならない。戻る
(注4) 最終取得原価法(購入品にあっては、最終仕入原価法又は最近仕入原価法、生産品にあっては、最終製造原価法又は最近製造原価法)は、わが国におけるきわめて多数の企業によって課税所得計算目的のために利用されているが、この方法は多額の評価損益を計上する可能性をもつので、これを無条件に企業会計にとり入れることは妥当でない。この方法の利用は本文に述べたような要件を満たす企業の場合に限られるべきである。
  最終取得原価法に類似した評価方法に時価法がある。時価法は時価主義を具体的に適用するための評価基準、すなわち時価基準に属する評価方法の総括名称である。時価法には、期末における再調達原価をもって棚卸資産評価を行なう再調達原価法と、期末における修正売価をもって棚卸資産評価を行なう修正売価法とがある。修正売価法は本文第一、二、3に述べるような一定の前提が存在する限り、本質的には時価法に属さないものとなしうる。わが国における若干の企業は時価法を適用している。時価法は、期末棚卸資産の取得原価を把握する手数を省略しようとする企業、又は会計要員の不足のために、取得原価の正確な把握が事実上行なわれがたい企業、会計帳簿が不備であって取得原価が明りょう正確でないと認められる小企業の場合に利用されているのである。しかし時価法は多額の評価損益を計上する可能性をもつので、その利用を避けることに努めるべきである。
  財産貸借対照表(特殊貸借対照表)にあっては、時価基準は唯一の評価基準であるが、期間損益算定を目的とする決算貸借対照表にとっては、時価基準は否定されなければならない。戻る
(注5) 基準棚卸法にあっては、まず正常販売量、正常製造量に基づいて材料、製品等の最低必要手持量(基準量)を定め、これに最低取得原価(過去のデータおよび将来の見込みに基づいて決定する。)、すなわち基準価格を付する。この場合、基準棚卸法を採用する初年度における基準量の期首帳簿価額が基準価格による金額をこえる額は利益剰余金に課して切り下げる。基準量をこえる手持量は、これを通常の取得原価基準による取得原価をもって評価する(基準量をこえる手持量を時価基準で評価することもあるが、評価損益の計上を避けるには取得原価基準によることが望ましい。)。各年度末においても常に基準量は基準価格で評価し、超過量は取得原価で評価するが、年度末の手持量が基準量を割っている場合には、その不足量を再調達原価等で評価し、同額の食込補充引当金を設ける。
  払出材料、払出製品等の原価は、次の算式によって求められる。
   (基準量の基準価額±期首超過量の取得原価額又は不足量の再調達価額)+当期受入量の取得原価額
    (基準量の基準価額±期末超過量の取得原価額又は不足量の再調達価額)=払出原価額
  期中において期首超過量の取得原価および当期受入量の取得原価に基づいて先入先出法、平均法等によって払出原価額を算定する場合においては、その払出原価額と右の算式による払出原価額との間に差異が生ずるがこれは売上原価差額として処理する。
  基準量は、企業の規模その他の変化に伴う正常販売量又は正常製造量の変化に応じて変更される。基準価格は、それが決算時の時価を上回るに至れば引き下げられる。基準量の変更および基準価格の変更による棚卸資産帳簿価額の修正は一切、利益剰余金に加減することによって行なわれる。戻る
(注6) 英国のチャータード会計士協会の意見では、低価法を適用する場合の時価として、基本的には正味実現可能価額をとる。しかし期末棚卸量が販売量に比して大きい場合、又は生産期間が長い企業、製品商品の売価が再調達原価の低落に応じて低落する事情が認められる企業にあっては、再調達原価をも考慮に入れることが必要であるとする。この場合には、取得原価、正味実現可能価額および再調達原価のうち最低の価額が評価額とされる。
  米国会計学会の意見では、もっぱら、正味実現可能価額を時価とする。
  米国公認会計士協会の意見では、根本的には、再調達原価を時価とするが、再調達原価が正味実現可能価額をこえる場合には、正味実現可能価額を時価とし、再調達原価が「正味実現可能価額から正常利益を差し引いた価額」より低い場合には、後者を時価とする。再調達原価を基本線としながら、このような上限と下限を定めているのは、再調達原価と売価との跛行関係から、再調達原価への評価切り下げが過大又は過少の評価切り下げとなるのを防ぐ趣旨である。
  米国所得税法では、再調達原価を時価とし、再調達原価が正味実現可能価額をこえる場合には、正味実現可能価額を時価とする。
  わが国法人税法では、本則として再調達原価(購入品については再買原価、生産品については再造原価)を時価とし、生産品の場合には「正味実現可能価額から利益を差し引いた価額」を時価とすることも認める(施行規則第二十条、個別通達昭三五直法一 六二、一四および一五)。
  ドイツ株式法には、取引所価格又は市場価格を低価法上の時価とし、これがない場合には「貸借対照表日の価額」を時価とする旨の規定がある。取引所価格は、貸借対照表日現在の取引所における購入原価、市場価格は、同日現在の具体的市場における購入原価と解されている。ただし、購入価格と販売価格が異なり、後者が低い場合には販売価格と解されている。「貸借対照表日の価額」は、取引所又は具体的市場が存在しない場合の実際取引価格を指し、購入品については、実際の購入原価、生産品については、正味実現可能価額から正常利益を差し引いた価額、正味実現可能価額が確定できない場合には、再造価額と解されている。
  西ドイツ株式法政府草案には貸借対照表日現在の取引所価格、市場価格、または貸借対照表日の価額からアフター・コストを差し引いた額を時価とする旨の規定が盛られた。したがって取引所価格、市場価格、貸借対照表日の価額は貸借対照表日現在における棚卸資産の販売価格を意味するもののようである。戻る
(注7) 後入先出法に簿価時価比較低価法(切り放し方式)を併用すると、低価法の実施によって計上された未実現損失がいつまでも実現損失にならない可能性があり、したがって後入先出法をとる場合には、原価時価比較低価法(洗い替え方式)しか認めがたいという考え方がある。
  米国所得税法は、後入先出法には低価法の併用を全く認めていない。後入先出法のもとでは、価格上昇期において棚卸資産利益が課税所得として顕現せず、またこれに低価法の併用を認めると価格下落期に損金の計上を認める結果となり、他の評価方法をとる納税者に比し、後入先出法をとる納税者があまりにも有利な立場に置かれるという理由による。これに対して後入先出原価・時価比較による切り放し方式の低価法を税法に容認させようとする運動ないし主張が従来強く行なわれている。
  洗い替え方式の低価法ならば後入先出法と併用しても問題は生じないが、切り放し方式は前述の理由で税法にとり入れることが問題視されているのである。しかしながら、後入先出法の精神は、棚卸資産の正常在高について価格変動損益を期間損益から中和化させることにあり、正常在高をこえる在高については価格変動損益の中和化を図ろうとするものではないから、超過在高の評価額が時価をこえる場合には評価切下げを行なうことを容認すべきである。戻る 戻る
(注8) 棚卸資産の確定買付契約が存在する場合において契約上の代価よりも時価が低落しており、かつ、その回復が見込まれないときには、これに対して、評価切下げを行なうことが是認されている。この見解にしたがえば、いまだ買手側の現実の棚卸資産を構成していない確定買付契約につき右の事情が確認されたときに、将来当該棚卸資産を入手したときに現実化する回収不能原価部分を切捨て、費用に計上することが許されるのである。借方「評価損」に対する貸方項目はこれを「買付契約評価引当金」として流動負債に計上する。買付契約評価引当金は、買掛金の一部の事前計上を意味する債権と解されるのである。戻る
(注9) 期末棚卸量に生じた不可避の食込みがその後補充されたときに、その補充分につき原始原価を復活する後入先出法は、補充が行なわれた年度末に、補充分の取得原価と原始原価との差額を食込年度の売上原価修正(前期損益修正)として計上する方法である。
  食込分を食込年度の期末再調達原価で評価してその帳簿原価との差額だけ補充引当金を設定し、補充が行なわれた年度には、補充分の取得原価を最初の帳簿原価まで引き下げるために補充引当金を取りくずす後入先出引当金法も存在する。普通、補充分の取得原価と最初の帳簿原価との差と補充引当金取崩額との間に多少の誤差が生ずるが、これは前期損益修正(前期売上原価修正)として処理する。
  拘束在高法は期末棚卸量のうち期首量には期首評価額を付し、期首量を超過する数量には期末再調達原価を付する。期末数量が期首量を食い込んでいる場合には食込量に期末再調達原価を付し、期首量の評価額から食込量の評価額を差し引いた金額を期末棚卸額とするのである。
  食込量を期首評価額でなく、期末再調達原価で計算するから、インフレーション時にはそれだけインフレ利益が排除されるのである。
  拘束在高法は、基準量および基準価格を定めない点および食込みが回復されてももとの評価額を復活しない点で基準棚卸法と異なる。拘束在高法がここに説明した二つの後入先出法と異なる点は、食込補充分に最初の帳簿原価を復活しないことにある。戻る
(注10) 贈与、交換、債権の代物弁済、現物出資、合併等によって取得した棚卸資産については、適正時価(現金買入価格、現金売却価格等)、相手方の帳簿価額等を基準にしてその取得原価を決定するのであるが、その詳細については後日「資産評価準則」を公表する際にゆずる。戻る
(注11) 後入先出法は、いわゆる棚卸資産利益を期間利益に顕現させないようにすることを目的とする評価方法であるが、これには、物品の払出しのつど後入先出計算を行なう方法、期末材料と期末仕掛品中の材料と期末製品中の材料を通算して後入先出計算を行なう方法、材料の通算のみでなく、加工費についても期末仕掛品中の加工費と期末製品中の加工費を通算して後入先出計算を行なう方法、金額後入先出法(アメリカでいわゆるダラー・ヴァリュー後入先出法)等の区別がある。企業の諸事情、棚卸資産の性質等を考慮して最も妥当な方法が選択されるべきである。
  金額後入先出法にあっては、期末棚卸高の期末価額を最終取得原価で計算するか、期中の総平均原価で計算するか、期中の最初取得原価で計算するかにより、期末増加分の原価は最終取得原価となり、総平均原価となり、あるいは最初取得原価となる。
  金額後入先出法の適用には価格指数の算定が必要である。戻る
(注12) 「使用資産に類する物品であっても、その実体が徐々に製品に化体していくもの、耐用期間がきわめて短いもの又は取得原価が微細なものは棚卸資産である。」というのは、その供用前の保有高を棚卸資産とする趣旨であるが、供用中のものであっても払出額を棚卸の方法又は月割計算の方法によって徐々に費用化していく場合には、いまだ費用化されない残高も棚卸資産を構成すると解すべきである。戻る
(注13) 後入先出法については、不可抗力(戦争等)による期末在庫量の食込みが生じた場合には、これに対する救済手段として食込量が補充された場合において最初の帳簿原価を復活させる方法を特別立法によって認めることが望ましい。戻る
(注14) 売価還元法にあっては、本文の第一、三、2に述べるような方法で低価基準の評価を行なうのを例とする。売価還元法にあっては、期末商品の時価としてその再調達原価を直接に把握することが困難なためである。
  期末商品の時価として正味実現可能価額又は「正味実現可能価額から正常利益を差し引いた価額」を把握し、売価還元平均原価と比較することによって評価切下額を決定する低価法の適用は、小売業にとって必ずしも不可能ではないが、実際問題として利用されていない。かつ、施行規則は購入品の時価を再買原価(仕入時価)と定めているのであるから、原価率によって再買原価に相当する価額を推定する結果となる通常の売価還元低価法の採用を認めることが理論的である。戻る
(注15) 企業会計審議会から近く発表される「原価計算基準」は、原価差額の調整に関して次の基準を表明しているので、充分に参酌されたい。
 (一) 実際原価計算制度の場合における原価差異の処理は、次の方法による。
1 原価差異は、材料受入価格差異を除き、原則として当年度の売上原価に賦課する。
2 材料受入価格差異は、当年度の材料の払出高と期末在高に配賦する。この場合、材料の期末在高については、材料の適当な種類群別に配賦する。
3 予定価格等が不適当なため、比較的多額の原価差異が発生する場合、直接材料費、直接労務費、直接経費および製造間接費に関する原価差異の処理は、次の方法による。
(1) 個別原価計算の場合
   次の方法のいずれかによる。
  イ 当年度の売上原価と期末における棚卸資産に指図書別に配賦する。
  ロ 当年度の売上原価と期末における棚卸資産に科目別に配賦する。
(2) 総合原価計算の場合
   当年度の売上原価と期末における棚卸資産に科目別に配賦する。
 (二) 標準原価計算制度における原価差異の処理は、おおむね次の方法による。
1 数量差異、作業時間差異、能力差異等であって異常偶然な状態に基づくと認められるものは、これを非原価項目として処理する。
2 その他の原価差異は、実際原価計算制度の場合に準じて処理する。
「原価計算基準」は、差額調整について右のように述べているが、なお原価差額の調整に関しては、全面的に申告書による調整を行ないうるように現行法を改めることを要望する声が強いので、この点検討すべきである。

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